20010301

ヒトのクローン胚から臓器、研究認める法案可決 英国上院


2001年03月01日

【ロンドン28日=沢村亙】英国で見つかった牛や豚などの家畜伝染病、口蹄疫(こうていえき)は、二十八日午前までに二十二の農場で感染が確認され、全国規模の流行となった。人を介したウイルスのまん延を防ぐため、学校・公園の閉鎖やスポーツ大会中止の動きが広がり、五月に予定された総選挙の先送りも検討されている。問題の農場には家畜を輸出していた所もあり、感染の不安は国外にも波及。欧州をパニックに陥らせた狂牛病の悪夢がよみがえる。

殺処分された豚や羊が干し草や鉄道のまくら木と一緒に火を放たれ、空を赤々と焦がす光景が英国各地の農場に広がっている。

イングランド東部エセックス州の食肉処理場で二十一日、英国では二十年ぶりに口蹄疫に感染した豚が見つかって以来、感染が確認された農場は日々増加。しかもイングランド北部、中部、西部、ウェールズと広範囲に散らばっている。

英政府は鳥類を除く家畜の国内輸送を禁止し、感染した農場から半径十六キロ以内への立ち入りを制限した。北部の農場から空気感染や家畜輸送で全国に広がったことまではわかったが、感染源については「もし飼料用の肉だとしたら、密輸入されたものだ」(ブラウン農相)と言うのがやっとだ。

最初に感染が確認された直後、英政府は家畜の輸出を禁止した。だが、西部デボン州の農場では直前まで欧州連合(EU)域内に羊を輸出しており、感染が欧州大陸に広がった可能性も出てきた。

オランダ、ドイツ、フランス、スペインは輸入家畜の殺処分を始めた。アイルランドは英国との国境地帯に軍を動員して、家畜が入らないよう監視。米国、スイス、オーストラリアは英国への旅行者に肉製品を持ち帰らないよう呼びかけた。

英国の国際フェリー港では、出国する乗船客の弁当からハムやソーセージが「押収」されている。

フランスでは輸入家畜の一部が第三国に輸出された可能性が指摘され、仏政府が追跡作業を急いでいる。

口蹄疫は感染力が強く、人間や他の動物、自動車についた土などを介してウイルスが広がるおそれがある。

このため英政府は、田園地域に行かないよう国民に呼びかけ、感染地域の学校は休校に。動物園や自然公園も軒並み休園になり、シカが放し飼いされているロンドン郊外のリッチモンド公園も入場が禁止された。

競馬の開催は二十七日から一週間の中止が決まり、ラグビーの国際試合も取りやめに。狩猟や釣りも禁止や自粛が広がっている。

国防省は緊急ではない国内演習を当面行わないと決めた。

<口蹄疫> ひづめが偶数に割れている牛や豚、羊、シカなどがかかる伝染病。高熱やよだれが出て、口の中やひづめに水ほうができる。発病した動物のだ液や汚物などから感染が広がる。人に感染することはなく、肉を食べたり乳を飲んだりしても健康に影響はない。病気にかかると乳の量が減り肉質が落ちるなど、生産性が低下する。伝染力が極めて強く、治療に時間がかかるため、家畜は感染が確認されしだい殺処分される。日本でも昨春、九州などで92年ぶりに発生が確認された。

【写真説明】

英ケンブリッジに近い動物公園で26日、動物への口蹄疫の感染を防ぐため、公園内にある託児所へ向かう途中に長靴を消毒する坊や=AP

英イングランド北部の農場で27日、口蹄疫に感染したために焼却される牛=AP

 

《朝日新聞 2001年03月01日より引用》

 

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