20010113

皮膚から心臓細胞 胚を使わず可能に 牛で成功と英社が発表


2001年01月13日

絶滅が心配されている野生の牛ガウルのクローンを誕生させることに初めて成功したと、米国のバイオ会社が十二日発表した。「ノア」と名付けられた子牛は八日に生まれ、四十八時間後に細菌感染で死亡した。「種の壁」を超えて近縁種の卵子や子宮を使い、クローン動物を生み出せることを示したことになり、絶滅動物復活への道を開いたと注目されている。

 アドバンスト・セル・テクノロジー社は、米国内の動物園で死亡し、八年間冷凍保存されていた雄のガウルの皮膚から、細胞の核を取り出し、ふつうの乳牛の卵子に移植。四十個の胚(はい)を代理母役の牛の子宮に入れ、八頭が妊娠。このうち一頭からノアが生まれた。アイオワ州の施設で誕生した時の体重は三六キロで、異常はなかったという。

「不幸なことにその後の感染で死んだが、種の壁を超えてクローンができたことははっきりしている」と研究チームのメンバーは話し、クローン技術は死亡とは関係ないとみている。

ガウルはインドや東南アジアの原産で、おとなの雄は六十センチほどの角をもち、体重は一トン近くになる。

一九九七年に英国でクローン羊のドリーの誕生が伝えられて以来、絶滅動物をクローン技術で復活させようという試みが米国などで進んでいる。理論的には、絶滅してしまった動物でも、体細胞がわずかに残っていれば新たな個体を生み出せる可能性があるからだ。

アドバンスト社は、絶滅の危機にあるスペインの野生のヤギや、中国のパンダ、チーターについてもクローンをつくる計画を検討しているという。日本でもマンモスの復活を計画しているグループがある。

●不明な点まだ多い

今井裕・京都大教授(生殖生物学)の話 絶滅動物をクローン技術で復活させる可能性の第一歩を示したといえる。しかし、卵子を提供した動物と復活させたい動物の種が、どれほど近いと可能になるのかなど不明な点は多い。また、通常の牛が生まれてすぐに死ぬ率は数パーセントだが、クローン牛の場合は四割を超す。クローン技術が影響している可能性はあり、まだ確立した技術とはいえない。

【写真説明】

クローン技術で生まれた野生牛ガウルの赤ちゃん=AP

 

《朝日新聞 2001年01月13日より引用》

 

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