伝統ブランド「畜大牛乳」 牛育て製造・販売、半世紀超 帯広畜産大
2016年05月21日
国内有数の酪農地帯、北海道・十勝地方にある帯広畜産大学(帯広市)は半世紀以上も「畜大牛乳」を製造・販売している。「濃厚だけど飲みやすい」と地元で好評だ。「近大マグロ」などで注目される大学発ブランドの先駆けともいえる存在だ。
5月初めの夕方、同大の搾乳舎に「ウィーン」という機械音が響いた。両側に牛が10頭ずつ。「うしぶ。」の学生3人が牛の乳房を消毒して搾乳機を取り付けると、生乳がチューブを勢いよく流れていった。
部活動の「うしぶ。」は現在1~3年生25人。大学の非常勤職員になり、1日2回、朝夕2~3時間の搾乳作業を交代でこなす。畜産科学課程3年の加村莉香子さん(20)は「安心して飲んでもらえる牛乳を作っているという責任とやりがいを感じる」と話す。
国立唯一の農畜産系単科大学の同大では、実体験のなかで学んでもらおうと1943年に学内で牛の飼育を始めた。現在は約200頭。学内の放牧地や採草地などは約140ヘクタールに及ぶ。牧草やトウモロコシなどの主な飼料は自給し、雪のない5~10月は放牧する。
畜大牛乳は62年、実習の一環で製造を開始。いまは年間約900トン生産される生乳の一部を学内の乳製品工場でその日のうちにパック詰めし、年に高温殺菌の1リットル(税込み191円)10万本、低温殺菌の500ミリリットル(同122円)2万本を製造する。学内の大学生協や帯広市近隣のスーパーなどでも販売している。 アイスクリームの製造・販売も始まり、関連の売り上げは年間約8千万円。収益は大学の研究費などに充てられるという。
飼育する牛は毎月、血液検査で健康管理し、親牛は栄養状態も詳しく調べる。こうして蓄積したデータは、飼料の与え方や効率的な繁殖方法などの研究に活用。「食の安全」の分野にも生かされ、乳製品工場は2014年に食品安全の国際規格「FSSC22000」を国内の大学で初めて取得した。牛舎や農場は学生の実習のほか、酪農家らの研修にも使われる。
畜産フィールド科学センター長の木田克弥教授(60)は「低コストでたくさん搾れ、健康で長生きする。『ベストの酪農』を実現できている」と胸を張る。(松本理恵子)
【写真説明】
牛の搾乳をする学生たち。生乳は殺菌された後、「畜大牛乳」になる=いずれも北海道帯広市
帯広畜産大学の大学生協に並ぶ「畜大牛乳」
《朝日新聞社asahi.com 2016年05月21日より抜粋》