ニワトリやブタにも福祉を EU、自由化との両立をWTOに提案
2000年07月29日
【ブリュッセル28日=冨永格】ブタやニワトリなど、食肉にされる動物の権利を重く見る欧州連合(EU)はこのほど、世界貿易機関(WTO)の農業交渉でこの問題を正式協議するよう求めた。家畜の扱いで一定の配慮を義務づけられている生産者の努力に報いるため、「動物の福祉」に関する多国間協定や、加工品へのラベル表示を提案している。
動物愛護団体の発言力が大きいEUでは、農場から処理場まで運ぶ間に何回休ませるかなど、苦痛を和らげる方策が肥育から処理の各段階で定められている。生産費は割高になるが、「手を尽くしたうえで気持ちよく食べたい」という社会的合意がある。こうした文化や規則のない国からの安い輸入品により、欧州の畜産業者や食品産業の努力が無駄になっては困る、というのがEUの主張だ。
欧州委員会がWTOに出した要望書は、次期ラウンド(多国間交渉)の農業分野で、畜産品の貿易自由化と「動物の福祉」を両立させる道を模索すべきだ、と訴える。
(1)自由貿易のルールと動物の福祉の関係を明確にする多国間合意(2)家畜にどれほど気を使って処理したかを最終製品に表示(3)福祉水準を守ったことによるコスト上昇分を公的に補てん――の三点が具体的な提案だ。
《朝日新聞 2000年07月29日より引用》