親の親はほとんど輸入
2000年04月29日
スーパーに並ぶ卵は,まず100%国産卵だ。これらの卵を産むニワトリを,業界でほコマーシーヤル鶏と呼んでいる。日本には約1億4千万羽(昨年2月現在)いる。
コマーシャル鶏の親は種鶏,種鶏の親は原種鶏,原種鶏の親は原々種鶏と呼ばれる。親の親の親にまで呼び名があるのは,コマーシャル鶏からひなを育てても産卵能力の優れた鶏ができないようになっているからだ。種鶏も種鶏としては一代限り。種鶏の90数%は輸入されている。毎年,50万羽近い種鶏のヒヨコがヨーロッパやアメリカから空を飛んでやってくる。
種鶏を供給する会社は世界規模の競争で,ついにドイツ,フランス,オランダのたった3社に絞られてしまった。
「こうなったのは62年の種鶏の自由化以降。集団として産卵能力の劣った国産鶏は一気に外国にやられてしまった」と,日本養鶏協会の武田隆夫事務局長はいう。今では国産鶏は数%にすぎない。
エサの大部分を占めるトウモロコシや大豆かすも輸入物。工サ価格は85年のプラザ合意後の円高で大幅に下がり,卵の低価格に大きく寄与したと農水省はいう。卵が物価の優等生といわれるのも,経済のグローバリゼションの波に洗われた結果とわかる。
親もエサもほとんど輸入品の国産卵。事情を知ると,ちょっと悲しい。
(編集委員・内山幸男)
《朝日新聞 2000年04月29日より引用》