19991110

厚生省機関が細胞提供 牛の卵子に人の核移植


1999年11月10日

東京農業大教授らが昨年十一月、人の体細胞を核を除いた牛の卵細胞に入れる研究をしていた問題で、教授に牛の卵細胞を使うアイデアを提案、人の培養細胞を提供したのが、厚生省の機関である国立国際医療センター研究所(東京都新宿区)の室長だったことがわかった。大学でのクローン関連研究は学内の委員会にはかるよう求める文部省指針があるが、厚生省には同様の指針がなかった。

これを受けて厚生省は九日、同省の研究機関に対して、人クローンの研究に当たるおそれがある場合、事前に機関内の倫理委員会で審査するように通知した。

今回の研究は血液細胞の基礎実験で、東京農大が卵細胞を扱う高度な技術をもっていることを知った室長がもちかけたという。

文部省は九日、東京農大から事実関係の報告を受けたうえで、学術審議会のクローン研究専門委員会で審議し、必要があれば、研究を規制する指針のあり方を見直す可能性があることを明らかにした。

指針は、人の体細胞を核を除いた卵細胞に移植することを禁じているが、卵細胞が人以外の生物のものも含むかどうかについては触れていない。文部省の河村潤子・研究助成課長はこの点について「現段階で指針を変更する考えはない」としつつ「東京農大からの報告次第では指針自体を工夫するなどの選択肢はあり得る」との考えを示した。

これに先立ち、東京農大の進士五十八(しんじ・いそや)学長は、十日にも学内で生命倫理委員会を開き、事実関係の調査を始めると発表した。

 

《朝日新聞 1999年11月10日より引用》

 

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