ヒト細胞、牛の卵子に移植 東京農大グループ、国の指針違反の疑い
1999年11月09日
東京農業大学(東京都世田谷区)の岩崎説雄・応用生物科学部教授らのグループが、ヒトの細胞を、牛の未受精卵に移植する実験をしていたことがわかった。白血病治療のための基礎研究だが、クローン羊「ドリー」を生み出した「核移植」と呼ばれる手法が使われた。文部省は、クローン人間の誕生を防ぐ目的で昨年七月に作られた国の指針に違反している疑いがあるとして、事情を聴くことにしている。(3面に解説)
岩崎教授らは、昨年十一月、白血病患者の血液の細胞二十七個を、核を取り除いた(除核)牛の未受精卵に移植。核を含む血液の細胞が、牛の卵子の中で性質が変わるかどうかを調べた。
約二日間培養し、計八個が分割。二つは八つの細胞に分裂したが、それ以上は育たなかった。その後、国の科学技術会議が受精卵の扱いについて議論を始めたため、研究を凍結したという。
一方、それ以前の昨年七月、文部省の学術審議会はクローン人間づくりを規制するための指針を決め、各大学に通知した。「ヒトの体細胞由来核の除核卵細胞への核移植は行わない」としている。しかし、岩崎教授は「動物の個体をつくる意図は全くなく、指針がヒト以外の卵細胞を含むとは考えていなかった」という。ただ、「事前に、学内の審査会にはかるべきだった」と話している。
《朝日新聞 1999年11月09日より引用》