19991107

卵子凍結技術を開発 不妊治療に応用 東京の施設、学会報告へ


1999年11月07日

国内の不妊治療施設が未受精卵(卵子)の凍結保存を本格的に始め、受精の実験に高い確率で成功していることがわかった。凍結受精卵による不妊治療は年間数千例あるが、卵子は解凍後の受精が難しいとされてきた。この技術は、強い放射線治療などを必要とする女性の卵子を事前に保存し、妊娠の機会を残せるようにするだけでなく、若い時に自分の卵子を保存して将来の出産に備える「卵子銀行」に道を開くことにもつながる。(3面に解説)

この施設は東京都新宿区の「加藤レディスクリニック」(加藤修院長)。現在、治療目的で約百五十個の卵子を保存している。

同クリニックのほか、札幌市の「神谷レディースクリニック」の神谷博文院長も、「本格的な研究はこれから」としつつ、数十個の卵子を凍結保存していることを明らかにした。

日本産科婦人科学会は会告で、不妊治療が必要な夫婦に限り、卵子の凍結を認めている。ただ、卵子は受精卵に比べて細胞膜が弱いことなどから凍結は難しいとされてきた。八年前、宮城県の病院が凍結卵子による妊娠例を報告したが、出産には至らなかった。

加藤レディスクリニックは今春、女性の同意を得て余った卵子の提供を受け、桑山正成・研究開発部長を中心に凍結技術の開発を始めた。卵子を急速に冷やす「ガラス化法」を独自に改良した結果、解凍後に顕微授精を試みた卵子九個のうち八個が受精、体外培養を続けた約半数が胚盤胞(はいばんほう)まで育った。この結果は、十一日から都内である日本不妊学会で発表される。

胚盤胞は受精卵が着床直前の段階まで発達した状態。凍結せずに受精卵を培養しても、ここまで育つのは半数ほど。こうした成績をもとに、凍結段階までの臨床応用に踏みきった。今後、患者の条件が合えば、解凍して顕微授精などをし子宮に戻す予定。凍結卵子を使った出産例は世界でも少ない。

 

《朝日新聞 1999年11月07日より引用》

 

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