19990901

羊のドリー「純粋コピー」にあらず ロスリン研究所などが証拠


1999年09月01日

英国で一九九六年に生まれた世界初の体細胞クローン羊ドリーは、一匹の羊の純粋な「コピー」ではなく、遺伝面では二匹の母を持つという内容の研究を、ドリーが生まれたロスリン研究所や米コロンビア大のグループがまとめた。一日発行の米科学誌ネイチャー・ジェネティクスに掲載される。こういう可能性は当初からいわれていたが、今回は直接の証拠をつかんだ。

ドリーは六歳の雌羊の乳せん細胞を、核を除いた別の羊の未受精卵に入れ、これを生みの親の子宮に移して誕生させた。ドリーは、細胞の核のDNAをみる限り、乳せん細胞を提供した羊と同じものをもつ。

コロンビア大のエリック・ショーン博士らは、細胞の核を取り巻く細胞質内の小器官ミトコンドリアに注目した。ミトコンドリアは核とは違うDNAを持っており、精子と卵子が合体するふつうの生殖で生まれた子は、卵子のミトコンドリアDNAを受け継ぐ。ドリーの場合、ミトコンドリアDNAは、乳せん細胞を提供した羊のものか、未受精卵を提供した羊のものか、はっきりしていなかった。ドリーをつくる際、乳せん細胞の核だけでなく、ミトコンドリアを含む細胞そのものを未受精卵に入れていたためだ。

今回、ドリーを含む十匹の体細胞クローン羊のミトコンドリアDNAを調べたところ、遺伝情報はいずれも、乳せん細胞を提供した羊のものではなく、未受精卵を提供した側のものとよく似ていることがわかったという。

 

《朝日新聞 1999年09月01日より引用》

 

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