生食OKの卵に安心印 衛生専門家ら認定機構、来夏にも市場へ
1999年05月09日
安心して生で食べられる卵に「お墨付き」を与える「日本鶏卵HACCP認定機構」(理事長=今井清・日本大学教授)が八日、東京都内で第一回の理事会を開き、発足した。卵に入り込む病原菌のサルモネラによる食中毒が増加していることに危機感を抱いた食品衛生の専門家らが集まったもので、生産現場で衛生管理状況を検査する。早ければ来夏には認定マーク=写真=付きの卵が市場にお目見えする。
厚生省のまとめによると、国内のサルモネラ食中毒発生件数は一九九八年で六百三十件。五年前に比べ、四倍以上に増えた。原因ははっきりしていないが、検出された菌の半分以上がサルモネラの一種で、親鶏から卵に感染するサルモネラ・エンテリティディス(SE)だ。
SEは病気を起こす力が強い。十分に加熱すれば問題ないが、抵抗力の弱い高齢者や病人、乳幼児が感染した卵を生で食べると死亡することもある。
発足した同機構は、卵を産む鶏とその親、それらの鶏が食べるエサを始め、洗卵まですべての生産過程でサルモネラの有無を調べる。サルモネラが発見されず、管理体制が基準を満たしていれば、認定証を発行する。米航空宇宙局(NASA)の宇宙食開発から生まれた食品衛生管理方式「HACCP」を採用し、世界で最も厳しいといわれる基準で検査する。将来は流通過程にも対象を広げていく方針だ、という。
同機構は、生産・流通業界からは独立し、畜産を研究している大学教授や製造物責任法(PL法)に詳しい弁護士らが理事に就任した。役員の一人の茶薗(ちゃぞの)明・日本家禽(かきん)学会副会長は「安全な卵だと一目で分かれば、消費者にとって大きなメリットがあるし、業界全体の衛生管理レベルを上げることにもなる」と話している。
《朝日新聞 1999年05月09日より引用》