サルモネラ「DT104」、国内感染初確認 抗生物質ほとんど無効
1999年03月23日
食中毒を起こす病原菌のサルモネラの一種で、多くの抗生物質が効かない「多剤耐性DT104」による感染が国内で発生していたことが、東京都衛生研究所などの調査で初めて確認された。この菌は一九八四年に英国で見つかって以来、欧米で広まり、集団食中毒を起こすなど問題になっている。しかし国内での実態はこれまで報告がほとんどなく、緊急対策として厚生省は全国調査を実施しており、四月中にも中間報告をまとめる予定だ。
都衛研などは、八七年から九八年に都内で発生したサルモネラ食中毒三十六件を調べた。その結果、九七年に一件(患者数十一人)、九八年に三件(同十六人)、計四件がDT104によるものだった。死者はいなかった。この菌は食肉から感染することが多いが、確認された事例のうち、二件は牛の生レバーを食べて感染したと推定されている。
DT104は、ヒトに感染すると食中毒を起こす。高齢や病気で体の弱った人や乳幼児では血液に入り込んで敗血症を起こし、死亡することもある。敗血症は抗生物質で血液中の菌を殺すしか治療法はないが、ほとんどの抗生物質がDT104には効かないため、治療が難しい。
米国では、九六年に起きたサルモネラ食中毒のうち、三割以上がDT104によるものだった。
○加熱すれば問題ない
渡辺治雄・国立感染症研究所細菌部長の話 欧米で広がった耐性菌は、数年後に日本でも広がる可能性が高い。ただ、DT104は加熱すれば死ぬ。生肉を食べない、調理の際に肉と野菜の調理器具を分ける、など衛生の基本を守っていればまず問題はない。
《朝日新聞 1999年03月23日より引用》