19990205

精子保存もインスタント 凍結乾燥法を利用 ハワイ大、マウスで


1999年02月05日

マウスの精子をちょうどインスタントコーヒーのように凍結乾燥(フリーズドライ)する方法が遺伝子情報を常温で簡単に保存する方法として注目を集めている。米ハワイ大医学部の柳町隆造教授と若山照彦助教授が開発した方法で、凍結乾燥した精子の粉末に水をかけて戻すと、精子は死んでしまって動けないが、受精はできる。実際に正常なマウスが誕生した。米国立保健研究所(NIH)などが、この方法でマウスの遺伝子情報バンクができないか、検討を進めている。

柳町教授らは昨年、マウスの精子を零下五〇度に冷却して急速に乾燥させ、粉末にした。水を加えて戻し、卵細胞に直接注入した。その結果、受精し、正常なマウスが誕生することを確認した。保存期間は室温(二五度)では一カ月、四度では三カ月たったものでも受精できた。

精子の保存には、現在、零下一九六度の液体窒素で冷凍する方法が使われているが、手間がかかるうえ、コストもかさむ。マウスは医学研究に欠かせない実験動物で、高血圧を発症するマウスなど、遺伝子を突然変異させたさまざまなマウスがつくられている。凍結保存の精子が利用できれば、遺伝情報が簡単に保存できる。柳町教授は乾燥凍結の方法など改善の余地があるが、遺伝子情報が保たれることは確認できたとしている。

柳町教授らのグループは受精のメカニズムの先駆的な研究で知られる。昨夏、大人のマウスの核を卵子に注入させる方法で、クローンマウスを誕生させて、世界的な注目を集めた。

(ホノルル=辻篤子)

 

《朝日新聞 1999年02月05日より引用》

 

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