19990118b

アフリカ産動物、集団死は新型ウイルス 東海地方の動物園


1999年01月18日

東海地方の動物園で集団死したアフリカ産のウシの仲間、トムソンガゼルから新型のウイルスが見つかり、イヌやヤギなどもこのウイルスで急死することが、岐阜大学や日本中央競馬会(JRA)競走馬総合研究所、農水省家畜衛生試験場の共同研究チームによる調査で分かった。国内の家畜やペット、野生動物にウイルスが広まっている可能性があり、研究チームは厚生省国立感染症研究所と協力、実態調査に乗り出すと共に、人間にも感染しないかサルで実験する予定だ。

一九九三年、動物園で飼育されていた十匹のトムソンガゼルが脳炎になってけいれんなど重い神経症状を起こし、うち、八匹が急死した。岐阜大農学部の平井克哉教授(家畜微生物学)、福士秀人助教授(病原微生物学)、柵木(ませぎ)利昭教授(家畜病理学)らが調査、ヘルペスウイルスの新型が原因だったことがわかり、「ウマ9型ウイルス」と名付けた。このウイルスはアフリカから持ち込まれた可能性が高いという。

研究チームはその後、ウイルスを確実に封じ込めて実験できる施設で、ほかの種類の動物にも感染するか実験を続けた。その結果、イヌ、ヤギ、モルモット、ハムスター、マウスなどが脳炎になり急死した。ウシ、ウマ、ブタは感染して脳炎特有の状態になるものの、死に至ることはなかった。

実験では、致死率が高かったことから、研究チームは早急な実態調査が必要と判断した。サルへの実験も同様の施設で実施する。既に、サルの細胞に対しては感染することがわかっている。研究チームは調査、実験結果を四月に神奈川県で開かれる日本獣医学会で発表することにしている。

平井教授は「身近な動物園で致死性の高い新型ウイルスが見つかったのは驚きだ。国内外で広まると深刻な感染症になる恐れがあり、厳重な管理の下でウイルスの性質を分析して、ワクチンの開発につなげたい」と話している。

<ヘルペスウイルス> ほ乳類、鳥類、両生類、魚類などの自然宿主に感染し、これまでに九十種以上が知られている。ヒトでは、水ぼうそう・帯状疱疹(ほうしん)や性器ヘルペスを起こす種類がある。種類によっては、感染しても発症しなかったり、自然宿主以外に感染すると重い症状を引き起こしたりする。

 

《朝日新聞 1999年01月18日より引用》

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です