国内流入を初確認 輸入鶏肉に耐性菌「VRE」
1999年01月18日
東海地方の業者がベトナムから輸入した焼き鳥用の鶏肉から、抗生物質の「最後の切り札」とされるバンコマイシンが効かない腸球菌(VRE)が検出されたことが十七日、名古屋市衛生研究所の調べで分かった。昨年七月、厚生省の調査で、横浜市と神戸市の検疫所で検査したフランスとタイからの輸入鶏肉にVREが見つかったが、国内への流入は確認されていなかった。厚生省は輸入鶏肉の検査を強化するとともに、VREを出現させた原因となった家畜用薬剤の使用禁止を国際的に呼びかけていくなどの対策をとる。
VREが検出されたのは、ベトナムでくしに刺した状態に加工し、冷凍輸入された「焼き鳥用」の鶏肉。東海地方で飲食店用に鶏肉を卸している業者が昨年、検疫所でVREが発見されたことを報道で知り、民間の研究機関に調査を依頼。同機関から回ってきた菌株を名古屋市衛生研究所が検査したところ、バンコマイシンに対する高度な耐性を示すvanA遺伝子を持つVREと判明した。
八〇度で五分間以上加熱すれば、VREはほとんどすべて死ぬが、調理者の手指などにつき、そこから国内に広がっているおそれがある。専門家によれば、調理の前後に手や調理器具を清潔にすれば、感染をほぼ防げるという。
VREは体内に入っても健康なら発病しないが、高齢者や重病、大手術直後など、体の抵抗力が弱っている人は、炎症や敗血症などを起こしやすい。効く薬がほとんどないため、欧米では院内感染により、患者が死亡する例が出ている。
VREは、欧州や東南アジアで、バンコマイシンによく似たアボパルシンという抗生物質を鶏に与えた結果、出現した。日本では一九九六年十一月に養鶏業者がアボパルシンの使用を自粛し、九七年二月に農水省が使用を禁止した。
《朝日新聞 1999年01月18日より引用》