決め手は細胞の種類 クローンウシ 米科学誌に報告
1998年12月13日
近畿大学農学部の角田幸蛆教授らの研究グループは、今年七月から八月にかて体細胞から八頭のクローン牛をつくることに成功したのは、卵にかかわりの深い「卵丘」や「卵管」の細胞を使ったためとする研究報告をまとめた。十一日発行の米科学誌サイエンスに掲載された。
報告によると、同じメス牛から、卵巣の中の卵をとりまく卵丘、卵の子宮への通り道になる卵管の二種類の細胞を取り出し、核を取り除いた別の牛の未受精卵に核移植した。体外で培養したところ、卵丘細胞由来の三十七個のろち十八個と、卵管細胞由来の八十九個のうちの二十個が順調に育った。
この中から卵丘細胞由来の六個と卵管細胞由来の四個を選び、二個ずつ五頭のメス牛に移植した。
その結果、世界初の体細胞クローン牛になった「かが」「のと」をはじめ、計八頭が生まれた。八頭のち一頭は死産、三頭が出産後に死亡したが、先天的な異常は認められなかったという。
昨年二月に発表されたクローン羊「ドリー」の実験では、二十九個の卵を十三頭に移植したが、成功したのはドリー一頭だけだった。その後の国内外の実験に比べても近畿大グループの成功率は高く、注目されていた。
角田教授は「卵丘や卵管は卵と常に接触している。とくに卵丘細胞は、卵と細胞質を通じて情報交換をしており、核を移植してもなじみやすいのではないか」と分析している。
《朝日新聞 1998/12/13より引用》