人のホルモン、マウスの尿に 米の研究所、成功
1998年01月26日
医薬品となる人の成長ホルモンをマウスの膀胱(ぼうこう)でつくらせ、尿に分泌させることに米農務省農業研究所などのグループが成功した。羊や牛の乳に人の血液凝固因子や血清アルブミンを出させる研究は進んでいるが、成長したメスしか「動物工場」の役目を果たせない。尿なら、オスとメスで誕生直後から死ぬまでずっと出るため、医薬品となる物質の大量生産に適している。科学誌ネイチャー・バイオテクノロジーに発表された。
同研究所のロバート・ウォール博士らは遺伝子組み換え技術を使い、マウスの膀胱で特定のたんぱく質をつくる遺伝子の一部を、人の成長ホルモンをつくる遺伝子と置き換えた。このマウスはオス、メスを問わず、膀胱で成長ホルモンを生産し、尿中に分泌した。この性質は産まれた子にも受け継がれたという。
乳と違い、もともと尿にはたんぱく質や脂質がわずかしか含まれていないため、人為的につくらせたホルモンやたんぱく質を比較的簡単に選別できるのも利点としている。産業利用のためには尿量の多い牛など大型の家畜で実現させる必要がある。
《朝日新聞 1998/01/26より引用》