ヒト遺伝子組み込んだクローン羊「ポリー」英で誕生 商業利用へ一歩
1997年07月25日
世界で初めてクローン羊「ドリー」をつくった英国の研究陣が、新たにヒト遺伝子を組み込んだクローン羊「ポリー」を誕生させたと、二十四日付の英紙ファイナンシャル・タイムズが報じた。この羊はヒトのたんぱく質を含んだ乳を出すことができる。この技術を使えば、特定のたんぱく質を作れない患者の治療に役立てることができる。研究グループは、クローン技術の商業利用に道を開く一歩だと述べている。
同紙によると、つくったのはエディンバラ近郊のロスリン研究所とPPLセラピューティクス社。ポリーは生後二週間になる。
研究グループは羊の細胞から核を取り出し、ヒトの遺伝子を導入。これを核を抜いた羊の胚(はい)細胞に入れ、雌の羊のおなかの中で成長、出産させた。組み込んだヒト遺伝子が働くと、ポリーが分泌する乳の中にヒトのたんぱく質が含まれる仕組みだ。
PPL社は将来、ポリーのような複製をたくさん作り、血友病などの治療に役立つたんぱく質を大量に生産する計画をたてている。
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ロンドン発ロイター電によると、ヒト遺伝子を組み込んだクローン羊はポリーを含む五頭が生まれた。
○今井裕・農水省畜産試験場生殖工学研究室長の話 受精卵にヒト遺伝子を組み込んで育てた羊や牛、豚などはすでにいるが、遺伝子組み換えとクローン技術を組み合わせてヒト遺伝子を導入した動物は初めてだ。人間に有用な物質を大量生産する方法の一つとして注目される。クローン技術の応用としては当然の成り行きで、産業利用に踏み出したといえる。急速に広がるクローン技術の応用に社会的な議論が必要だと思う。
【写真説明】
ヒト遺伝子を組み込んだクローン羊ポリー(左)と出産した代理母の黒めんよう=ロイター
《朝日新聞 1997/07/25より引用》