O157食中毒で米国産のカイワレ種子検査へ 厚生省
1997年04月26日
横浜市で病原性大腸菌O(オー)157の食中毒患者が食べ残したカイワレダイコンからO157が検出された問題で、厚生省は二十五日までに、このカイワレを出荷した神奈川県内の生産業者が使用していた種子三百五十キロを買い取り、国立衛生試験所で検査を始めた。厚生省はカイワレの種子そのものが汚染されていた可能性があるとの見方を強めており、すべての種子を発芽、成長させ、菌が検出されるかどうか確かめる。また昨年七月、大阪府堺市で起きた集団食中毒の原因と疑われるカイワレを生産した業者も、神奈川県の業者と同じ米国オレゴン州産の種子を使っていたことも判明。同省は強い関心を示している。
厚生省が購入したのは神奈川県の業者が使用していた種子と同じロット番号が記されたカイワレの種子入りの袋十四個。ロット番号は生産された農場を示しているという。
この業者は今月初めから生産を中止し、種子を種苗業者に返品。厚生省は横浜市内の倉庫に保管されていた種子を買い取った。
厚生省によると、国内で使われるカイワレの種子はほとんどがアメリカやイタリア、ニュージーランドなどから輸入されている。米国産がほぼ半分で、ワシントン州やオレゴン州が多いという。神奈川県の業者はオレゴン州で二年前に生産された種子を使用。堺市のケースでもロット番号は違うものの、オレゴン州で二年前に生産された種子が使われていた。
厚生省は、堺市の集団食中毒事件を含め、カイワレが原因食材として疑われたケースでいずれも生産施設内から菌が検出されなかったことから、種子そのものに注目している。堺市のケースでは約五十キロの種子を入手して検査したところ、O157は検出されなかったものの別の大腸菌が検出された。このため今回は昨年の七倍の量の種子を徹底的に調べることにした。
○同じ種子で確認必要
日本獣医畜産大学の寺田厚教授(食品衛生学)の話 O157などの大腸菌群が、カイワレダイコンの種子の中に入り込むことは考えにくい。ただ、種子の表面に付着することは十分ありうる。
種子がある程度湿気のあるところで保存されていれば、菌は生き残る。そのまま水耕栽培をすると、適度な温度と水、栄養があるために菌は増殖しやすい。当然、生育したカイワレは汚染されてしまう。しかし、種が乾燥状態で保存されていたら菌の増殖は考えにくい。実際に業者が持っていた種子を生育させてみて、菌が出るかどうかを複数回にわたって確認することが大事だ。
《朝日新聞 1997/04/26より引用》