後藤和文さん マンモス再生の夢追う(人間往来) 【西部】
1997年03月22日
一万年前に絶滅した巨大生物をよみがえらせる「マンモス再生プロジェクト」の協力協定が、四月にも日ロ交流協会(東京)とロシア・サハ共和国の間で正式調印の運びだ。発案者の鹿児島大農学部助教授、後藤和文さん(四六)=写真=は「様々な分野の人から励まされ、やる気が出てきた」。
黒毛和牛の改良や絶滅の危機にある野生牛の増殖に取り組んできた。顕微授精の研究を進めるうち、シベリアの永久凍土帯に眠る氷漬けマンモスから精子を取り出し、遺伝的に近いゾウと繰り返し人工授精させることを思いついた。
実家は阿蘇山のふもとの農家。幼いころから牛やヤギと親しみ、畜産研究の道を選んだ。「専門的で閉鎖的な研究と違い、社会の反響を実感できる。学者生活で今が一番楽しい」
激励の手紙や電子メールは百通を超え、今月下旬には「マンモスが現代によみがえる」(河出書房新社)も出版。印税はプロジェクトに全額充てるという。 次女(一〇)と長男(八つ)が描いたマンモスの絵を研究室に飾る。「子どもは動物が好き。家族との会話も増えた」と笑顔を見せた。
《朝日新聞 1997/03/22より引用》