日米TPP、最終攻防へ あす実務者協議再開
2015年07月08日
環太平洋経済連携協定(TPP)交渉で、日米両政府は9日から実務者協議を再開する。最大の焦点は米国産のコメの優先輸入枠で、日本が輸出する自動車部品の関税引き下げも調整が残っている。日米は、7月中に参加12カ国の全体合意をめざすことでは一致しており、今回の協議が最初の試金石となる。
米通商代表部(USTR)のカトラー次席代表代行と大江博首席交渉官代理らが9日から2日間程度、東京で話し合う。
米大統領に交渉権限を与える貿易促進権限(TPA)法の成立を受け、参加国は23日ごろから米ハワイで12カ国の首席交渉官会合を開き、28日ごろから閣僚会合に移行する日程で調整している。交渉を主導してきた日米は、それまでに両国間の「落としどころ」を固めた上で、全体合意に持ち込むシナリオを描く。
ただ、日米協議もそう簡単には進みそうにない。甘利明TPP相は7日の記者会見で「残されている課題は重要品目だ。対応のメドがたってから日米の閣僚会合をしたいが、見通しはまだない」と語った。
■コメの「輸入枠」焦点
これまでの交渉で、日本が関税の維持を強く求めてきた「重要5項目」のうち、牛・豚肉、乳製品、砂糖、小麦は着地点が見えつつある。最大の課題は日本人の主食であるコメだ。
日本は国内のコメ農家を守るため、コメには1キロあたり341円の高い関税をかけて安いコメの輸入を抑えてきた。この関税の仕組みは維持する代わり、米国産米には無税か低関税の「輸入枠」を設置する方向で調整している。
ただ、米国が約20万トンの輸入枠を要求しているのに対し、日本は最大で5万トン程度と主張し、話し合いは難航している。日本は、毎年77万トンを「ミニマムアクセス」として無税で輸入する。コメの消費量は年8万トンずつ減っている。輸入枠をさらに増やせば、コメ価格がさらに下がる懸念があり、日本としては簡単に妥協できない状況だ。
牛肉は、関税38・5%を15年程度かけて9%程度まで下げる方向で調整している。輸入が急増した場合に関税を元に戻すなどする「セーフガード」の発動基準などをめぐって、詰めの協議を続けている。
国産牛肉の5割弱は高級な和牛肉が占める。交渉関係者によると、牛肉の関税を大幅に引き下げても、米国や豪州産は赤身中心の安い肉が多く、和牛への影響は限定的と見ている。ただ、生産量の3割程度を占める安い肉は輸入肉と競合するため、畜産農家への影響は出そうだ。
豚肉は、安い肉の、1キロあたり482円の関税を数十円にする方向で調整している。高い肉の関税(4・3%)についても引き下げる方向で検討している。乳製品では、店頭で品不足になっているバターの扱いが焦点になりつつある。輸入量はニュージーランド産が6割強だが、低関税の輸入枠を設置する案も有力視されている。
■車部品関税撤廃、品目や期間調整
自動車分野は、米国が部品の関税(2・5%)の大半を協定発効後10年以内に撤廃することで日米が一致。撤廃する品目や期間の調整が続いているほか、米側がいったん下げた関税を元に戻す措置の発動条件をどうするかが残っている。
米国が自動車本体にかける輸入関税(乗用車2・5%、トラック25%)は、日本が交渉入りする前の取り決めで、TPPの関税交渉で妥結した全品目の最長期間で撤廃することが決まっている。実際には10年以上になる見通しだ。
一方で、米国が輸出増をねらって求めてきた自動車の安全基準の緩和には、日本は応じない方針だ。
(大畑滋生、編集委員・小山田研慈、小林豪)
■TPP交渉で今後予想される流れ
<9日>
東京で日米実務者協議が再開
<23日ごろ>
米ハワイで12カ国の首席交渉官会合
<28日ごろ>
米ハワイで12カ国の閣僚会合
→日米、日豪などの二国間合意
→12カ国の全体合意
【図】
日米交渉の主な争点
《朝日新聞社asahi.com 2015年07月08日より抜粋》