LED、鶏の産卵に影響は 県畜産試験場、照明の色変え研究 /山梨県
2015年05月10日
省エネ・長寿命で普及が進む発光ダイオード(LED)の光を鶏に当てて、卵の産み方や肉の質を変えられないか。こんな研究に県畜産試験場(中央市)が取り組み、採卵鶏に青や緑の照明を使うと産卵数が減ることを突き止めた。今年からは肉用鶏での実験にも乗り出す計画だ。
同試験場の松下浩一・主幹研究員によると、鶏に効率よく卵を産ませるため、最適な照明時間や明るさが以前から研究されてきた。従来は白熱電球が一般的だったが、近年、LEDへの切り替えが進む。LEDを使えば、赤、青、緑の単色の照明もできるので、色の違いが鶏に及ぼす影響を調べてみようと思い立った。
まず3年かけて採卵用の白色レグホンで実験した。400羽のニワトリを100羽ずつ四つのグループに分け、それぞれ赤、青、緑のLEDと、白熱電球を照明に使った。色によって明るさがばらつかないよう、LEDの設置や計測では県工業技術センターにも協力してもらった。
白熱電球では100羽が1日当たり平均で92個の卵を産んだが、緑と青では87個に減った。赤では変わらなかった。産卵数の変化は光を当てて1週間ほどで表れる。卵の大きさや品質には差が見られなかった。
なぜ産卵数が減るのだろう。鶏から採血して産卵に関係するホルモンの量を測ると、青や緑の照明では1割ほど減っていた。これが産卵に影響するらしいが、どうして青や緑の光でホルモンが減少するのかは分かっていないという。
産卵鶏は長く飼ううちに卵の数が減り、質も落ちてくる。こうしたとき、えさと水の摂取を抑えて一時的に産卵を止め、鶏の「若返り」を図ることがある。松下さんは「鶏にもストレスがかかる方法ですが、あらかじめ青や緑の光で産卵数を減らしておけば、えさと水の制限期間を短縮できるかもしれません」と話す。
今年度から肉用のブロイラーでLED光の実験を3年計画で始める。照明の色を変えることで、成長を早めたり、肉の質を向上させたりできないか。そんな期待をしている。(谷口哲雄)
【写真説明】
発光ダイオード(LED)で青く照らされた鶏舎=中央市乙黒の県畜産試験場
《朝日新聞社asahi.com 2015年05月10日より抜粋》