中国、自前の経済圏づくり加速 豪ともFTA合意
ブリスベン=斎藤徳彦、シドニー=郷富佐子2014年11月17日21時20分
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キャンベラで17日、会談を前に握手するオーストラリアのアボット首相(左)と中国の習近平国家主席=AP
中国とオーストラリア両政府は17日、2005年から続けてきた自由貿易協定(FTA)交渉が「実質的に妥結した」と発表した。中国は韓国とも10日に同様の妥結を発表したばかりで、主要な貿易相手と組んで自前の経済圏づくりを目指す動きが加速している。
豪州の首都キャンベラを訪れた習近平(シーチンピン)国家主席が17日、アボット豪首相と会談。その後、両国の担当閣僚が合意文書に署名した。
中国にとって豪州は7番目の貿易相手とされる。FTAが発効すれば、工業製品の豪州向け輸出の関税が下がるほか、中国企業が豪州で投資をしやすくなると期待する。一方の豪州は中国が最大の貿易相手。特に、業界規模が130億豪ドル(約1・3兆円)の酪農業のほか、現在12~25%の関税が課されている牛肉や羊肉などの畜産業が中国への輸出の際、恩恵を受けると見込まれている。
中国はこれまで、FTAを結ぶ相手を、経済規模や貿易額の比較的少ない国から慎重に選んできた。だが、中国抜きで米国が環太平洋経済連携協定(TPP)を主導していることもあり、自らも経済圏づくりに動く必要が意識されている。
韓国に続き、TPPの交渉参加国でもある豪州とのFTAにも合意したことで、こうした動きに弾みがつくと見られる。17日に豪州議会で演説した習主席は、自ら提唱する二つの「シルクロード経済圏」をつくる構想を加速させ、平和的な手段で地域協力を進めることを強調した。
一方、安全保障で日米との連携を深める豪州も、経済分野では中国との関係の深まりを歓迎する。
アボット首相は合意後、「協定は経済に何十億(豪ドル)ももたらし、雇用を生み、豪州人の生活水準を高めるだろう」とする声明を発表し、強い期待を示した。(ブリスベン=斎藤徳彦、シドニー=郷富佐子)
《朝日新聞社asahi.com 2014年11月17日より抜粋》