一部品目、関税下げも 日米、溝埋まらず TPP
2014年02月21日
環太平洋経済連携協定(TPP)交渉をめぐる日米の実務者協議は20日、3日間の日程を終えた。米側が求める牛・豚肉の関税引き下げ・撤廃が調整の焦点になり、日本は農産品の重要5項目(586品目)の一部で譲歩する姿勢を示したものの、溝は埋まらずじまい。ただ、自民党内では、一部品目での関税撤廃はやむを得ないとの認識も広まってきた。
今回の協議では、閣僚会合を目前に控え、日本はこれまでの協議より一歩踏み込み、農産品の重要5項目の一部で関税を引き下げたり撤廃したりする姿勢を示した。交渉関係者によると、特に米国の関心が高い牛・豚肉の関税についても、米国側の譲歩次第では、日本もある程度の引き下げに応じる用意があると伝えたとみられる。
しかし、米国から十分な譲歩を引き出すことはできなかった。関係者によると、米国は牛肉の関税についても「関税を残すなら関税率は1%未満だ」などと主張し、全品目の関税撤廃を求める従来の姿勢とあまり変わっていないという。
今回の協議は、米通商代表部(USTR)のフロマン代表の呼びかけを受けて甘利明TPP相が15日に急きょ渡米して実現。「ぶっつけ本番で(閣僚会合を)やってもうまくいかない」(甘利氏)との危機感を背景に、実務レベルで具体的な妥協案をさぐったが、具体的な妥協案づくりには至らなかった。決着への道筋がまったくみえないまま、22日からシンガポールで開かれる閣僚会合に結論は持ち越された。
一方、重要5項目を「聖域」と位置づけ関税引き下げに反対してきた自民党内には、586品目のうち、輸入実績のない234品目など国内生産者に影響が出ない一部品目について、関税撤廃はやむを得ないとの認識が広がり始めた。自民党の石破茂幹事長は19日、農産品の関税について「一センチたりとも動かないということでは交渉は難しい」と記者団に語り、一部品目で関税引き下げや撤廃もあり得るとの考えを示した。これは、甘利TPP相の「586品目を一品残らず守るのは難しいと多くの人が認識しているだろう」との見解に歩調を合わせたものだ。
ただ、その自民党内ですら、牛・豚肉の関税撤廃を認める雰囲気はほとんどない。20日、自民党本部で開かれた「TPP交渉における国益を守り抜く会」は、昨年4月の国会決議を改めて確認。「『聖域』が確保できないと判断した場合は、交渉からの脱退も辞さないものとする」ことを強調した。
会合後、会長の森山裕・元財務副大臣は記者団に、「我々は日本の農業や畜産を守る視点で戦いをしているわけではない。いかに国民の食料を守っていくかが一番の目標だ」と牽制(けんせい)した。
【図】
TPPをめぐる関係者の発言
《朝日新聞社asahi.com 2014年2月21日より引用》