この子は適任?DNAチェック 盲導犬、集中力・穏やかさ必須 帯広畜産大が考案
2014年01月08日
犬のDNA(遺伝情報)のわずかな違いを調べて、盲導犬=キーワード=になりやすい犬を見分ける方法を、帯広畜産大が考案した。子犬のうちに調べれば効率よく盲導犬を育成でき、実際に試したところ、合格率は5割を超えた。父親と母親の遺伝子を調べ、盲導犬にふさわしい組み合わせを調べる犬版「デザイナーベビー」の実用化を2年以内に目指すという。
盲導犬には、集中力や記憶力があり、穏やかで気が散りにくいなどの性格が適していると考えられている。こうした性格を備え、体が大きいレトリバー系の犬が選ばれることが多い。1歳を過ぎたころに適性を調べ、訓練を始める。しかし盲導犬になるのは狭き門で、訓練後の合格率は3~4割にとどまる。
鈴木宏志教授(家畜生命科学)のチームは、盲導犬になった犬となれなかった犬421匹の遺伝子配列のわずかな違い(SNP)を解析し、盲導犬にふさわしい性格に関連する10個のSNPを特定。SNPごとの特徴、組み合わせによって、盲導犬になれる確率が高い犬を見分けるモデル式を考案した。
昨年度、合否の判定前に28匹の犬に実際にこのモデルを試したところ、予測と一致した割合は5割強だった。今年度はさらに対象とするSNPや犬の数を増やし、予測の精度を7割以上に高めたいという。
このモデルを使えば、父親と母親の遺伝子の解析により、盲導犬になる子どもが生まれる確率の高い組み合わせを予測することも可能になる。チームは2015年度中に盲導犬の「デザイナーベビー」を実用化する計画だ。現在の育種の交配では通常、外見などをもとに選んでおり、遺伝子までは調べていない。
鈴木さんは7年前に特定の五つのSNPを持つ犬の合格率が高いことを発見したが、五つのSNP全てを持つ犬は0・5%程度しかおらず、実用化は難しいことがわかった。今回の方法は精度はやや下がるが、より多くの盲導犬の誕生につながると期待できるという。人の遺伝情報の取り扱いには倫理的な問題が多いが、犬では多くないとみている。鈴木さんは「盲導犬になれるかどうかは、生まれてからの環境もあるが、遺伝的要因が大きい。効率よく盲導犬を育成できれば、視覚障害者の方の希望にも応えやすくなる」と話す。
(岡崎明子)
◆キーワード
<盲導犬> 目の不自由な飼い主の指示に従い、目的地に誘導するために訓練された犬。盲導犬候補の雄は生後半年ごろに去勢し、雌は1年以内に不妊手術をする。潜在的需要も含めると盲導犬を必要とする障害者は約7800人という調査結果もあるが、現在の盲導犬の活動数は約1千匹にとどまる。この10年で100匹ほどしか増えていない。
【写真説明】
研究用に飼われているラブラドルレトリバー=鈴木宏志教授提供
《朝日新聞社asahi.com 2014年01月08日より引用》