20131230

遺伝子、卵子で一括診断 筋ジスなど数千種類の病気 命の選択、懸念も


2013年12月30日05時00分

新しい卵子診断法

新しい卵子診断法

受精前の卵子を壊さずに、筋ジストロフィーなど数千種類の病気を起こす染色体や遺伝子の異常を一度に見つける方法を、米ハーバード大と北京大の研究チームが開発した。9割以上の精度で異常を見つけることができた。チームはこの手法で「より健康な卵子」を選んで体外受精で出産する臨床研究を始めるという。専門家は生命の選択につながると懸念している。

新手法は、妊娠後に行う出生前診断と違い、診断結果で中絶せずに済む。受精卵の一部を取り出して調べる着床前診断とも違い、受精卵を傷つけずに済む。しかし、新手法は体外受精が不可欠だ。また、親が好む容姿や才能をもたらしそうな遺伝子の卵子を選んで赤ちゃんを作る「デザイナーベビー」を現実化する技術だとの懸念の声もある。検査には卵子のもとになる「卵母細胞」を使う。成熟して卵子になる途中で細胞の外に排出される染色体のDNAをすべて分析し、卵子に残る染色体や遺伝子の異常を予測。染色体や遺伝子異常で起きる数千種類の病気を一度に調べる。

実際に25~35歳の女性8人から70個の卵母細胞の提供を受け、染色体や遺伝子の異常を予測。体外受精させた受精卵で確認したら、9割以上の精度で遺伝子や染色体の異常が一致した。

従来の着床前診断は、異常のごく一部しか調べることができない。チームは試薬や温度管理を工夫し、これまでできなかった微量のDNAを正確に大量に増やす方法を発見した。

今回の方法では精子や受精後に発生する異常はわからない。しかし、卵子は精子より染色体の異常が2倍近く起こりやすいため、受精卵の異常の多くが予測できる可能性がある。

チームはこの手法を使い、北京大第三病院で遺伝病の女性ら約30人を対象に「より異常が少ない卵子」を選んで受精、着床させて体外受精の成功率を上げたり、遺伝病を防いだりできないか臨床研究をする。(大岩ゆり)

■慎重な検討必要

日本産科婦人科学会の新出生前診断検討委員長の久具宏司・東邦大教授の話 国内では重い病気などに限り着床前診断や出生前診断が認められている。新手法は、軽い病気の有無や身体の特徴も網羅的に予測できる。その情報を基に卵子を選べば、デザイナーベビーに大きく近づき、命の選択につながる。実用化には慎重な検討が必要だ。

 

《朝日新聞社asahi.com 2013年12月30日より引用》

 

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