肥満防ぐタマゴ開発中 岐阜大など、脂質吸収抑える抗体
2013年12月29日
【鈴木彩子】食べるだけで肥満を防ぐ特殊なタマゴの開発に、岐阜大学の長岡利教授(食品機能学)と岐阜市の企業イーダブルニュートリション・ジャパンが取り組んでいる。脂質の吸収を抑える抗体をニワトリに作らせる方法で、このほどマウスで効果を確かめた。英国の専門誌(電子版)に今月、論文を発表した。
ヒトや動物は食べた脂質を「リパーゼ」と呼ばれる酵素で分解して、腸から吸収している。脂質をとりすぎて肥満になるのを防ぐには、リパーゼの働きを抑える方法が一つの手段だ。海外では、リパーゼ阻害薬も普及しているが、肝炎などの副作用があった。長岡教授らはリパーゼにだけ結合して働きを邪魔するたんぱく質(抗体)を、ニワトリを使って作ることに成功した。まず、ニワトリにブタのリパーゼを注入してリパーゼ抗体を作らせる。その後、親鳥の抗体が濃縮したタマゴの黄身を精製し、得られた成分を健康食品として利用する。
この成分をエサに混ぜたマウスと、混ぜないマウス各8匹を35日間飼育したところ、混ぜた方が体脂肪率が平均1・6%低かった。また、この成分が脂質の分解をどれくらい妨げるかを調べたところ、茶カテキンの15倍、リパーゼ阻害薬の2倍、効果が強かった。
ニワトリに特殊な抗体をつくらせる研究は、イーダブル社が長年取り組む。これまでにロタウイルスや歯周病菌の抗体などを開発。食品に混ぜるなどして市販している。長岡教授は「抗体は脂質に特異的に作用する点が、これまでの食品成分と異なる」と話す。イーダブル社は、健康商品としての製品化も視野に、今後はヒトでの効果を確かめていくという。
《朝日新聞社asahi.com 2013年12月29日より引用》