名古屋コーチン、卵もでらうま 濃厚黄身でブランドに
2013年10月21日05時19分
- コーチンの卵を使った「菓宗庵」のプリンやどら焼きと大橋敏勝社長=名古屋市昭和区
- 手前が名古屋コーチンの卵。一般的な白玉や赤玉と違い、殻が桜色で白い斑点が出る
- 卵用に開発された「2代目」コーチン=名古屋コーチン協会提供
【諸星晃一】名古屋コーチンといえば高級な鶏肉で知られるが、その卵も濃厚な味わいで人気が出てきた。愛知県では産卵専門のコーチン改良に力を注ぎ、この秋に「2代目」の卵の出荷が本格化。農家はブランド力に期待する。 濃厚なクリーム色のプリン、ふわふわのシフォンケーキ……。名古屋市昭和区の「菓宗庵(かしゅうあん)」には、コーチンの卵を使ったお菓子が並ぶ。瀬戸焼に入ったプリンが1個450円、どら焼きは1個200円。価格は高めだが看板商品に育った。2000年、販路拡大のためネット商店街の楽天市場に出店。愛知から全国に発信できるお菓子の素材は何かを考え、行き着いた先がコーチンの卵だった。大橋敏勝社長(53)は「黄身の割合が高く、濃厚な味わい」と魅力を話す。
当初は「肉が入っているんですか」と問い合わせもあったが、いまや注文は米国、中国やモロッコなど海外からも来る。大橋さんは「コーチンは地鶏の王様。肉のブランド力が卵の人気を後押しした」と話す。
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名古屋コーチンは明治初期にさかのぼる。禄を失った旧尾張藩士が養鶏を手がけ、産卵能力を高めようと中国のバフコーチンと交配した。1962年に鶏の輸入自由化で海外種が市場を席巻し、コーチンは絶滅寸前に。その後のグルメ志向の高まりもあり、高級肉用鶏として復活した。
コーチンの産卵能力を高めようと、愛知県農業総合試験場は92年に品種改良に着手。99年に「初代」を開発し、全国の飼育数は00年の1万5千羽から昨年には10万1千羽まで増えた。10年がかりで改良された2代目が11年に誕生。今秋、卵の出荷が本格化する。
初代と比べ、2代目の卵の重さは平均で約1グラム増えた。1羽あたりの平均産卵数は年間換算で約260個と、約10個多い。桜色の殻に白い斑点が散る「桜吹雪」の柄はコーチン卵の特徴だが、斑点の出現率は80%弱と約20ポイント増えた。
大府市の花井養鶏場はコーチンを20年近く育てる。花井千治社長(52)は、「海外種に比べ卵の生産の不安定さが弱点だ。少しでも改善されれば助かる」と2代目に期待を寄せる。
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愛知県は「採卵農家の所得向上に」(県畜産総合センター種鶏場の木野勝敏課長)と、卵用コーチンの開発に力を入れてきた。農林水産省によると、県内の採卵農家は2月現在で186戸。20年前の4分の1近くまで減った。卵の安値安定と農家の大規模化で淘汰(とうた)が進む。
豊田市の永井進さん(63)は産卵能力が高い白色レグホンを約2万羽飼っていたが、15年ほど前にコーチンにかじを切った。「価格競争ではかなわない。卵にブランド力が必要だった」。飼育数を約4千羽に絞り、8割はコーチン。ホームページでも宣伝し、首都圏の居酒屋やラーメン店から煮卵用などで定期的に注文が届くようになった。
名古屋コーチン協会の大塚勝正事務局長は「ファンは確実に増えている。売り方次第で中小農家の大きな武器になる」と話している。
《朝日新聞社asahi.com 2013年10月21日より引用》