20130702

BSE全頭検査に幕 導入から12年、全国一斉に 48カ月超は継続


2013年07月02日

12年近く続いてきた牛海綿状脳症(BSE)の全頭検査が1日、全国一斉に終了した。自治体は、風評被害を恐れて横並びで続けてきた。一方で、異常が見つけられない若い牛まで検査され、国際的に「非科学的」との批判もあった。自治体が、国の廃止要請を受け入れた。生後48カ月超の高齢の牛の検査は今後も続く。

牛の食肉処理頭数が全国一で、2012年度は約22万6千頭にBSE検査をした北海道。乳用の役割を終えた乳牛を食肉用に出荷する例が多く、今後も約3割が検査対象の生後(月齢)48カ月超だ。

検査対象とそうでない牛を区別するため、48カ月超は赤、その他は青のスプレーで額に色をつけたり、色違いの札が付いたネックレスを掛けたりして、若い牛から順に取り扱うなど、処理場ごとに様々な方法が採り入れられた。

北海道畜産公社十勝工場(帯広市)では1日、332頭を扱い、そのうち検査対象は49頭だった。帯広食肉衛生検査所の前田勝美次長は「事前のシミュレーション通りに問題なく処理ができた」と話した。

道によると、全頭検査終了前に道民らから寄せられた意見126件のうち、53件が全頭検査継続を望む声だった。道の北村健・食の安全推進監は「不安の多くは『(BSEが)よく分からない』ということからきている。改めて丁寧な情報発信をしていきたい」と語り、処理場の見学会などを充実させる考えだ。

全頭検査終了の判断が6月下旬だった新潟県と新潟市は当面、独自予算で48カ月以下をサンプル検査する。県の担当者は「不安の声を無視できない。『全頭検査をやめても安全』という裏付けを取りたい」と説明した。

5月に海外輸出に成功し、国際的なブランド牛をめざす三重県の松阪牛。約140頭を育てる多気町の松本一則さん(55)は「BSEが出る前から伝統的な育成方法にこだわってきた。検査の有無で安全性は変わらない」と話した。

全頭検査終了について、全国消費者団体連絡会(東京都)の河野康子事務局長は「飼料規制や特定危険部位の除去などで安全が担保されており、冷静に受け止めている」。

また、自治体の財政負担が減るため、「この予算を畜産振興など有効に使うこともできる」と話した。例えば北海道の場合、国の補助を含め、今年度当初予算に計上した検査費用1億2千万円のうち約4千万円が浮く。

■横並び終了、国が主導

「当初は牛肉に対する不安が大きく、それなりの意味はあった。ここまで長引いたのは、風評被害の心配もあったのだと思う」。田村憲久厚生労働相は6月28日の会見で、一斉終了の動きを評価した。

全頭検査は国内初のBSE感染牛発見(2001年9月)で始まった。若い牛では見つけにくく、欧州と同じ「生後30カ月以上」の検査が想定されたが、消費者の不安解消が期待され、政治主導で全頭になった。

厚労省は05年に生後20カ月以下を検査対象から外したが、検査体制を持つ全自治体が全頭検査を続けてきた。今回の終了は、1日に検査の義務付け対象を48カ月超に引き上げるのに合わせ、厚労省と農林水産省が自治体に呼びかけた。世界で見つかったBSEのほぼ全ては48カ月以上で、引き上げても「健康影響は無視できる」との見解を食品安全委員会がまとめたためだ。

肉用牛は多くが生後30カ月までに出荷され、検査の対象外になる。厚労省は検査の補助金の打ち切りも決め「全頭検査を続ければ、安全でないとの誤ったメッセージになりかねない」と自治体を説得、「横並び終了」の環境を整えた。

国際機関が5月、日本を最も安全な国と認めたことも後押しした。国内では過去に36頭の感染牛が見つかったが、最後の発見は09年で、03年以降に生まれた牛では出ていない。飼料規制が行き届き、発生が抑えられていると評価された。

ただ、BSEのリスクは今もゼロではなく、感染防止策の必要性は変わらない。

《朝日新聞社asahi.com 2013年07月02日より引用》

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