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人クローン胚でES細胞 免疫拒絶ない治療期待


2013年05月16日

米オレゴン健康科学大の立花真仁研究員らのチームが、人の皮膚の細胞からクローン胚(はい)を作り、そこからさまざまな組織になれるES細胞(胚性幹細胞)を作ることに成功した。再生医療への応用も期待される成果として、15日付米科学誌セル(電子版)に論文を発表した。

チームは、人の皮膚の細胞から遺伝情報を担う核を取り出し、別の女性から提供され、核を除いた卵子に移植してクローン胚を作製。化合物を加えるなどして「胚盤胞(はいばんほう)」と呼ばれる段階にまで成長させ、ES細胞を取り出した。

iPS細胞(人工多能性幹細胞)は、患者の皮膚などから作れば、患者本人と同じ遺伝情報を持つため、移植に使っても拒絶反応は起きない。しかしES細胞は通常、卵子の提供者の遺伝情報を持つため、拒絶反応の心配がある。患者本人と同じ遺伝情報を持つクローン胚を作り、そこからES細胞を作ると都合がよく、盛んに研究されているが、うまくいっていなかった。

2004年には、ソウル大の黄禹錫(ファンウソク)教授らが「成功した」と発表。その後、完全な捏造(ねつぞう)だったことが判明し、科学史上に残るスキャンダルとなった。

人の卵子や受精卵を壊して作ることになるES細胞は、倫理的問題がつきまとい、材料になる卵子の入手も難しい。そのため研究の主流はiPS細胞に移っているが、iPS細胞よりも研究の歴史が長く、欧米では目や脊髄(せきずい)の病気の治療への応用も行われている。

国立成育医療研究センター研究所の阿久津英憲・幹細胞・生殖学研究室長は「胚の成長が止まるのを乗り越えたところが新しい。ただ、特性を詳しく調べないと、医療応用の可能性は未知数だ」と話している。  国内では、研究のためにヒトクローン胚を作ることは認められているが、クローン人間ができないように、子宮に戻すことは法律で禁止されている。(下司佳代子)

【図】

人クローン胚を用いたES細胞のつくり方/iPS細胞のつくり方

 

《朝日新聞社asahi.com 2013年05月16日より引用》

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