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和牛 海外流出に罰則 遺伝子の不正譲渡 農水省 法案提出へ


2020年01月15日

不正行為を取り締まる新法の主な仕組み

不正行為を取り締まる新法の主な仕組み

和牛の遺伝資源(精液と受精卵)の海外流出を防ぐため、農林水産省は、和牛の遺伝資源を不正に取得したり、無断で第三者に譲渡したりする行為に対し、刑事罰を科すことを盛り込んだ新法を創設する方針を決めた。20日に始まる通常国会への法案提出を目指す。〈解説32面〉

和牛を巡っては昨年から今年にかけて、大阪から中国・上海に遺伝資源を持ち出そうとした男3人について、いずれも家畜伝染病予防法違反などで有罪判決が確定している。ただ、同法は伝染病を予防するための法規制で、遺伝資源を海外に流出させる行為を直接取り締まる法律はない。

新法案は「家畜遺伝資源の不正競争の防止に関する法案」(仮称)。新法では、畜産農家ら遺伝資源の所有者から、悪質業者らがウソの繁殖地域や繁殖方法を持ちかけて不正に入手したり、無断で第三者に譲渡したりした場合に刑事罰を科す。さらに、その第三者が、不正な遺伝資源と知りながら、海外に輸出するなどした場合も罰則を適用する。

このほか、遺伝資源が悪用されることを畜産農家らが察知すれば、直接の譲渡先に加え、その先の仲介業者らに対しても、遺伝資源の転売や繁殖、輸出を事前に差し止められる権利を新設する。また、畜産農家らが悪質業者らに損害賠償を請求しやすいよう、遺伝資源の不正使用に伴う損害額の目安も設けるという。

農水省は昨年10月に有識者検討会を設置し、新たな法規制のあり方を検討していた。先月17日の検討会では、「不正流出の未然防止には、刑事罰の設置が最も実効性がある」などの意見が出た。検討会は今月20日に中間報告を取りまとめる見通しで、それを受け、農水省は具体的な罰則など法案の策定作業に入る。

農水省は今後、不正使用された遺伝資源にとどまらず、その不正使用によって誕生した和牛の遺伝資源についても、新法の規制対象とするかどうかを検討する。

和牛の遺伝資源の海外流出問題を巡っては、農水省は既に、遺伝資源の仲介業者らを対象に、遺伝資源の採取者の氏名を容器に明記し、売買帳簿を管理するといった流通管理の厳格化を求めるため、今年の通常国会で家畜改良増殖法を改正することを目指している。ある農水省幹部は、「ブランド力の高い和牛は日本の財産だ。法規制の不備をなくして海外流出を防ぎ、魅力をさらに高めたい」と話している。

図=不正行為を取り締まる新法の主な仕組み

 

《読売新聞 2020年01月15日より引用》

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