精肉売り場で「脱トレー」 エコ貢献、国が後押し 真空パックで鮮度長持ち
2013年01月13日
生協やスーパーで、トレーを使わずに包装した精肉商品が少しずつ増えてきた。真空パックに切り替えれば、肉の消費期限を長くできるメリットもある。環境省は、環境への効果を数値で表した「モノサシ」を作り、食品トレーを減らす動きを後押ししている。
「ノントレー大作戦実施中」のポスターがある精肉売り場。ポリ袋に入った鶏もも肉と豚こま肉が並ぶ。神奈川、静岡県などの6生協でつくる「ユーコープ事業連合」は、昨年11月中旬から12月上旬まで神奈川県内の4店で、環境省と共同でノントレー商品のPRを行った。
「ノントレー商品を買うと年間で30リットル入りゴミ袋約10袋分のゴミを減らせる」とメリットをアピール。ポップで掲示し、チラシを配った。来店した40代女性は「かさばらず、洗って回収箱へ入れる手間も省ける。トレーはなくても構いません」。
同連合は2010年夏から13店で、袋入りにした肉を扱い始めた。宅配商品では、精肉の大部分をトレーを使わない簡易包装にしている。現在、店頭での袋入り商品の売れ行きは、トレー商品の1~2割。「ノントレーを歓迎する組合員がいる一方、しゃぶしゃぶ肉のように表面を確認して買いたいという商品は、トレーなしでは販売が難しい」と同連合の山口友範・安全政策推進部長は言う。
東京都など5都県に91店を展開する東急ストアは、09年秋から本格的にトレー削減に取り組んだ。現在は鶏胸肉など精肉商品16点を真空パック包装で販売。真空パックは包装資材の使用量を約40%減らせる上、「日持ち向上のメリットもある」と山崎和彦・畜産課長。トレーは包装2日後が消費期限だが、真空パックは肉が空気に触れないため6日後に延ばせる。
11年度は104万パックを販売、前年度より2・4%増えた。今年度は140万パックに達する見込みだ。「他の品目も含め、さらにトレーを使わない包装方法を探っていきたい」と山崎課長は話す。
09年から始めた西友は、鶏肉と豚肉計6点を真空パックで販売する。09年から11年の累計で、トレーとラップの削減量は44トンになった。
天然資源の消費を抑え、環境への負荷を減らすため、ごみの発生抑制(リデュース)、再使用(リユース)、再生利用(リサイクル)の3Rを進める環境省。昨春、「3R行動見える化ツール」をネット上に公開した。食品トレーなしの販売やレジ袋の辞退による環境負荷の削減効果を調べられる。
「行動の効果が数値でつかめる」と同省。例えば食品トレーは代わりにポリ袋を使う前提で、トレーの18%が店頭回収され82%は廃棄、ポリ袋はすべて廃棄されると仮定して効果を算出した。
ユーコープ事業連合が売り場で掲示したノントレーのメリットも、このツールを使った。同省は「数値で示すことで、消費者の行動に変化を起こしたい。PR期間中の意識調査の結果などを分析し、活用法を考える」と話す。
(編集委員・大村美香)
■環境への効果は?
削減量 削減できる割合
原油 4.4ml 84.1%
廃棄物発生量 3.7g 84.1%
最終処分量 0.17g 81.6%
二酸化炭素 19g 85.0%
(100gの肉をトレーの代わりにポリ袋で販売した場合。環境省資料から)
【写真説明】
ポリ袋入りの商品が並ぶ店頭=横浜市のユーコープ事業連合・コープかながわハーモス荏田店
《朝日新聞社asahi.com 2013年01月13日より引用》