20130619

動物体内でヒト臓器、容認 国方針、移植医療研究に道 生命倫理・安全に課題


2013年06月19日

ブタなどの体内で人間の膵臓(すいぞう)や肝臓を作る実験が動き出す――。動物を利用して人間の移植用臓器を作るための基礎研究を認める方針を18日、国が示した。iPS細胞(人工多能性幹細胞)などの技術を活用したものだが、人間と動物の両方の細胞を持った新たな動物を生み出すことにつながり、双方の境界をあいまいにさせるなど、人間の尊厳に関わる問題もはらむ。▼3面=歯止め不可欠

対象になったのは、人間と動物の両方の細胞を持った「動物性集合胚(はい)」を作る研究。例えば、ブタの膵臓ができないようにした受精卵を、胚に育て、人間のiPS細胞を入れて動物性集合胚を作る。これをブタの子宮に戻すと、人間の膵臓を持つ子ブタが生まれる可能性がある。ブタの臓器は人間とほぼ同じサイズで、人間の移植用臓器になりうる。

再生医療への応用が期待されるiPS細胞は、様々な種類の臓器の細胞になるが、細胞から立体的で複雑な構造の臓器を作るのは難しい。動物性集合胚を利用すれば、動物の体内で目的の臓器を作らせることができ、有利とされている。

基礎実験も進み、今年2月、東京大学などのチームがブタの体内で別のブタの膵臓を作ることに成功。国の総合科学技術会議の専門調査会が、動物性集合胚の作成を制限する国の指針の改定を検討してきた。

18日の専門調査会では、動物の子宮に戻すことを認める一方、出産についてはどういう条件なら認められるのか、なお議論が必要とした。また、人間の尊厳を冒さない歯止めが必要とし、霊長類を用いた研究や、人間の脳神経、生殖細胞などを作る研究は、一定の制限が必要とした。

改正指針の具体的な内容は文部科学省が作る。ただ、動物の体内で胚からうまく臓器まで育つかどうかは未知数のうえ、未知のウイルスに感染する可能性など、安全面の課題も多い。(下司佳代子)

◆キーワード

<動物性集合胚> 動物の受精卵の分割が始まって生命の芽となった状態の胚に、人間の細胞を注入して作る。クローン人間づくりを規制するために2001年に作られた法に基づく指針では、動物性集合胚は移植用臓器を作る基礎研究に限って作成が認められているが、胚を実験室で育てられるのは14日間までで、人間や動物の子宮に戻すことは禁じられている。

【図】
動物の体内で人間の臓器(膵臓)を作るイメージ
《朝日新聞社asahi.com 2013年6月19日より引用》

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