20120504

2大学共同で獣医学部 山口大・鹿児島大


2012年05月04日03時00分

全国で初めての「共同学部」が、4月にスタートした。鹿児島大と山口大の共同獣医学部。秋入学など大学のあり方が見直されるなか、家畜、ペットなど、互いの得意分野を双方で生かせるようにと、「薩長同盟」が動き出した。

■講義はライブ映像・合同実習も

「鹿児島の方、聞こえていますか」

山口大の教室で教員が呼びかけると、鹿児島大の教室で学生が「はい」と応じた。両大学の教室にそれぞれカメラ2台と65インチの大型画面が3台あり、様子を互いに中継する。

カメラは教員が教壇のタッチパネルで操作する。問いかけに答える学生をアップにして映し出すなど臨場感を大切にする。山口大1年の関谷麻理子さん(18)は「一緒に授業を受けている感じ。これからが楽しみ」と話す。

両教室をライブ映像でつなぐ授業は1年生は週に2コマだが、専門科目が始まる2年生からは大半が対象となる。ただ、設備が整った教室は山口大には二つしかない。今年度中に五つに増やすが、「それでも足りるかどうか」と不安も残る。

共同学部の検討は5年前から始まった。初めは大学院レベルで交流があった宮崎大と鳥取大も参加していたが、途中で離脱。最終的にペット分野が得意な山口大と、家畜分野が得意な鹿児島大が、相乗効果を期待できるとして合意。鳥インフルエンザやBSE(牛海綿状脳症)など人と動物に関わる病気や、食の安全など幅広い分野に対応できる人材の育成をめざす。

獣医学系の学部や学科は1学年の定員が30~40人と少なく、分野によって大学の得意、不得意の差が大きい。共同学部の設置で学生は61人、教員は65人に倍増した。山口大の丸本卓哉学長は「スケールメリットを生かし、世界的なレベルの獣医師を育てたい」。鹿児島大の高瀬公三学部長も「学生の数も増え、互いに刺激を受けているようだ」と期待を寄せる。

岩手大と東京農工大、北海道大と帯広畜産大も4月から、それぞれの学部の下に獣医学の共同学科や課程を設けた。山口大と鹿児島大は「学部の方が学内外から予算をとりやすく、意思決定も早い。結果的に質の高い教育を学生に提供できる」と利点を強調する。  提携を後押ししたのが九州新幹線だ。昨年3月の全線開通で新山口―鹿児島中央駅間は最速2時間3分で結ばれ、従来より1時間以上も縮まった。

両大学は夏休みの合同講義を手始めに、ペット実習は山口大へ、牛や馬など家畜の実習は鹿児島大へ両方の学生を集めて実習する計画だ。希望すれば、相手の大学のゼミにも参加できる。山口大1年の中村あすみさん(20)は「鹿児島大に行って、山口ではできない牛や馬の実習をするのが楽しみ」と期待している。(峯俊一平)

〈共同学部〉 大学設置基準の改正により、2009年3月から、大学間で互いの強みを生かした共同学部が設置できるようになった。全国初の山口大と鹿児島大の場合、入試は別々だが、入学後は同じ試験で成績評価をする。学生の籍は入学した大学にあり、卒業生には両大学連名の学位が授与される。文部科学省によると、今のところ、他に共同学部を作る動きはない。

《朝日新聞社asahi.com 2012年05月04日より引用》

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