20120110

韓国、中国とのFTAに舵 農産物では曲折も


2012年01月10日03時00分

中国への直接投資額

中国への直接投資額

自由貿易協定(FTA)の拡大政策をとってきた韓国の李明博(イ・ミョンバク)政権は、中国からの積極的な働きかけに応じて中国と交渉入りすることに舵(かじ)をきった。欧州連合(EU)、米国に続くもので、競合する日本を出し抜く戦略も見え隠れする。ただ、米国とのFTAで国民に反発が残るなか、すんなりと交渉に入れるかどうかは不透明だ。 韓国と中国の経済的な結びつきは強まるいっぽうだ。2011年に貿易総額は2200億ドルを突破。韓国の貿易黒字額は中国側の統計で700億ドルに達した。韓国にとって中国は最大の貿易相手国であると同時に、もうけも期待できる相手なのだ。韓国は日本に先駆けて1992年、中国と投資保障協定を結んだ。韓国企業から中国への直接投資は約472億ドルで、日本より3割余り少ないものの、10年で5倍近くに増えた。昨年7月に発効したEUとのFTAは、欧州の債務危機の影響で思ったほどの効果があがらず、米国も先行きは不透明。大手メーカーの業績発表では「中国などの新興国市場の伸びに期待」との声があがる。

中韓両国を行きかう交流も大幅に増えている。両国間の訪問人口は10年、595万人と、過去20年間で46倍になった。北京とソウルは空路で約2時間。「一日生活圏」(劉為民・外務省報道官)になっている。

一方、韓国は日本が期待する日韓EPA(日韓経済連携協定)の再開には消極的だ。「すでに関税がかなり下がっており、韓国にはあまりメリットがない」(大手企業幹部)と産業界の後押しも小さく、7年余り中断したまま。むしろ素材・部品や自動車など日本からの輸入が増え、対日貿易赤字が一層膨らむとの警戒感が大きい。

さらに昨年8月以降、日本軍慰安婦問題が日韓の懸案となり、世論の対日感情も悪化。「日本との交渉は当面先送りし、まず中国と交渉を始める」(外交関係者)との基本方針が政府内で固まった。「中国との交渉が先に進めば、日本との交渉も有利に展開できる」との計算も働く。

しかし、中国との交渉入りにも曲折がありそうだ。野党も4月の総選挙や年末の大統領選に向けて、FTAを含む通商政策の全面見直しを求めている。牛肉価格の低迷で畜産農家のデモなどが続いており、農産物を中心にさらに打撃を与えかねない韓中FTAには反発も予想される。(ソウル=中野晃)

 

《朝日新聞社asahi.com 2012年01月10日より引用》

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