20111206

 

放射能の不検出目標 福島県、農産物で除染方針


2011年12月06日

福島県は5日、農地や森林の除染の基本方針を発表した。県内産のコメや野菜、牛肉などすべての農畜産物と木材やキノコなどの林産物について、モニタリング検査で放射性セシウムが検出されないことを目標に定めた。市町村や農協などに田畑や樹木の除染方法などを示し、着実な除染で達成を目指す。

東京電力福島第一原発の事故以降、県産の農畜産物全体が市場で敬遠されている現状を憂慮。「出荷制限や風評で甚大な被害を受けており、早急な除染が必要」としている。ただ、「検出なし」の具体的な目標時期は示していない。

田畑は表面の土と深さ30センチほどの土を入れ替えるなどして、作物の根からのセシウム吸収を防ぐ。果樹は土壌改良のほか、樹皮や枝をそぎ落とす。牧草もセシウム濃度の高い地域ははぎ取る。

また、政府が決めた基本方針に沿い、田畑や森林で作業をする人や近くの住民の被曝(ひばく)線量を「年1ミリシーベルト(毎時0・23マイクロシーベルト)以下」にすると明記。このうち住宅に近い森林については、2013年夏までに被曝線量を約半分に引き下げることを目指す。

森林の除染は、住宅地に近い場所を優先し、林に入ってから20メートルまでの範囲を目安に落ち葉や腐葉土を取り除く。線量が低くならない場合は枝葉も伐採すると記している。

●消費者を意識、実現には課題

福島県が自ら高い目標を課した背景には、原発事故で消費者が放射性物質に極めて敏感になり、県産品が市場で受け入れられない現状がある。

コメや牛肉に含まれる放射性セシウムは食品衛生法に基づく基準により、1キロ当たり500ベクレル以下なら市場で販売できる。しかし、県は「数値が少しでも出ているものは取引されなかったり値段が大幅に下がったりしている」と説明。この夏、主力の桃は昨年までの約半値、牛肉は3、4割下落した。「検出なし」の目標は「『基準以下』だけでは失われた市場価値は戻らない」との覚悟を示したものだ。

福島県は販売農家戸数が茨城県に次いで多い。このまま売れない状態が続けば、県の産業の地盤沈下につながりかねないとの危機感もあった。

目標は達成できるのか。それは、水田や果樹園の土壌からどれだけ放射性物質が除去できるかにかかる。県内で技術的指導をしている日本原子力研究開発機構の幹部は「平らな校庭の土の入れ替えは作業も単純で効果も分かりやすいが、うねのある田畑や山林ははるかに除染しにくい」と指摘する。膨大な作業量、費用の負担など実現までのハードルは高い。(大月規義)

■福島県が示した農林地の主な除染方法

【水田・畑】

・放射性セシウムを吸着させるゼオライトなどの資材をまく

・表面の土を30センチほど、深い土と入れ替えるか、深く耕す

【果樹園】

・幹や枝を高圧洗浄機で洗浄するか、樹皮を削り取る

・除草後、表土を削り取る

【牧草地】

・えさの牧草1キロ当たり300ベクレルを超える地域は、牧草をはぎ取る。土壌の処理は水田・畑と同様

【森林】

・住宅地に近いところから20メートルほど入った範囲を対象に、落ち葉や腐葉土を除去(杉などの常緑樹は3~4年程度継続、落葉樹は1回)

・常緑樹で線量が下がらない場合、枝葉を除去

 

《朝日新聞社asahi.com 2011年12月06日より引用》

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