(私の視点)放射能汚染処理 廃棄物は一括埋め立てを 立川涼
2011年10月20日
3・11の天災人災の後始末は、できるだけ短期間で経費も少なくしたい。社会保障や社会資本整備など、国の予算は使い道がほとんど決まっている。投入できるお金は限られているだけに、これからの東北と日本の復興新生に税金を集中して投入したい。
放射能に汚染された廃棄物処理を考えてみよう。これまで原発の事故は起きない想定だったから、当然のことながら重大事故による大規模な放射能汚染対策に関する法制度は全く不備である。汚染された廃棄物の処理ルールや、汚染の判定基準なども設定されていなかった。
私は非常事態として、時限的な特別立法を提案したい。日本の廃棄物処理は、利活用して資源を循環させる考えに基づいているが、この際、循環の考え方を捨てて、一括して埋め立てる方針を明確にするのだ。
新法は省庁間の役割分担や調整を越えて、すべての放射能汚染物を一括処理する権限を持たせる。一般廃棄物、産業廃棄物、農畜産物、土壌などを問わず、すべての放射能汚染物は事前の選別や前処理をせず、一括して埋め立て処分する。処分地は原発の地先海域しかないだろう。原発立地の時点で漁業権は消滅しており、埋め立て処分で難航する地権者との合意も要らないと思う。
海岸埋め立てで、時に国際問題となる海洋への漏出については、世界的にも水準の高い日本の海洋土木をもってすれば、越えられないハードルではない。海洋への漏出防止策を講じておくことが、埋め立て地近辺の関係者と合意できる前提ともなる。選別や焼却処理をすれば、所要時間と経費が増え、二次汚染の恐れもあるから、非放射能汚染がれきも一括埋め立て方式で処理することが望ましい。
埋め立て予定地は、地震や豪雨などの二次災害を考えると、山地・高地は避けて海岸低地とするのがいいだろう。これまでも廃棄物処分場の立地については、自治体関係者はどれほど苦労してきたことか。今回は国が積極的に関与するとしても、埋め立て地は少数、大規模が望ましい。高度の技術が投入でき、総工費も少なくて済むだろう。
跡地利用についても地域の多様な要望にこたえることができる。札幌市郊外のモエレ沼は、ごみ処理場として利用した後、彫刻家のイサム・ノグチ氏の設計により、モエレ沼公園(189ヘクタール)として見事に再生している。公園内のモエレ山(62メートル)は知らない人が見たら、ごみからできた山とは思わないだろう。こうした事例を参考にしてみてはどうか。
(たつかわりょう 愛媛大名誉教授〈環境科学〉)
《朝日新聞社asahi.com 2011年10月20日より引用》
(私の視点)放射能汚染処理 廃棄物は一括埋め立てを 立川涼
2011年10月20日
3・11の天災人災の後始末は、できるだけ短期間で経費も少なくしたい。社会保障や社会資本整備など、国の予算は使い道がほとんど決まっている。投入できるお金は限られているだけに、これからの東北と日本の復興新生に税金を集中して投入したい。
放射能に汚染された廃棄物処理を考えてみよう。これまで原発の事故は起きない想定だったから、当然のことながら重大事故による大規模な放射能汚染対策に関する法制度は全く不備である。汚染された廃棄物の処理ルールや、汚染の判定基準なども設定されていなかった。
私は非常事態として、時限的な特別立法を提案したい。日本の廃棄物処理は、利活用して資源を循環させる考えに基づいているが、この際、循環の考え方を捨てて、一括して埋め立てる方針を明確にするのだ。
新法は省庁間の役割分担や調整を越えて、すべての放射能汚染物を一括処理する権限を持たせる。一般廃棄物、産業廃棄物、農畜産物、土壌などを問わず、すべての放射能汚染物は事前の選別や前処理をせず、一括して埋め立て処分する。処分地は原発の地先海域しかないだろう。原発立地の時点で漁業権は消滅しており、埋め立て処分で難航する地権者との合意も要らないと思う。
海岸埋め立てで、時に国際問題となる海洋への漏出については、世界的にも水準の高い日本の海洋土木をもってすれば、越えられないハードルではない。海洋への漏出防止策を講じておくことが、埋め立て地近辺の関係者と合意できる前提ともなる。選別や焼却処理をすれば、所要時間と経費が増え、二次汚染の恐れもあるから、非放射能汚染がれきも一括埋め立て方式で処理することが望ましい。
埋め立て予定地は、地震や豪雨などの二次災害を考えると、山地・高地は避けて海岸低地とするのがいいだろう。これまでも廃棄物処分場の立地については、自治体関係者はどれほど苦労してきたことか。今回は国が積極的に関与するとしても、埋め立て地は少数、大規模が望ましい。高度の技術が投入でき、総工費も少なくて済むだろう。
跡地利用についても地域の多様な要望にこたえることができる。札幌市郊外のモエレ沼は、ごみ処理場として利用した後、彫刻家のイサム・ノグチ氏の設計により、モエレ沼公園(189ヘクタール)として見事に再生している。公園内のモエレ山(62メートル)は知らない人が見たら、ごみからできた山とは思わないだろう。こうした事例を参考にしてみてはどうか。
(たつかわりょう 愛媛大名誉教授〈環境科学〉)
《朝日新聞社asahi.com 2011年10月20日より引用》