20111018

汚染稲わら7200トン 農水省、処分終了見通せず


2011年10月18日

放射性セシウムによる牛肉汚染の原因となった稲わらについて、農林水産省は17日、残されている汚染わらが8道県の農家1018戸に約7200トンあるとの推計を公表した。同省は汚染度が高いわらの処理に自ら乗り出したが、大半は処分が終わる見通しが立っていない。

7月に発覚した牛肉汚染問題は、東京電力福島第一原発の事故でばらまかれたセシウムが屋外にあったえさ用のわらに降り注いだことが原因になった。汚染わらは16道県に流通。食べた可能性がある牛の出荷頭数は5千頭近くに上った。

農水省は畜産農家などに対し、牛が食べないようにし、汚染わらは隔離した上で着色して区分けするよう通知。セシウムが1キロあたり8千ベクレル以下だったら土の中に埋めていいとの基準を示したが、環境省が管理型処分場が望ましいなどと難色を示したために作業が止まっている。8千ベクレルを超すものは人気の少ない場所で遮水して放射線を防ぐ盛り土などをして一時保管し、規制線を設けるよう求めたが、周辺住民の抵抗感もあって保管場所の確保が課題となっている。

その結果、今月7日までの集計で、肉牛の出荷停止になった福島、宮城、岩手、栃木(いずれも8月に停止解除)のほか、北海道、秋田、山形、茨城の計8道県で保管・処分が必要なわらが残っている。最も多いのは宮城で約4700トン。次いで福島が約1500トン、岩手約600トン、栃木約270トンの順という。

福島と栃木両県の計43戸には10万ベクレルを超すわらがあり、これらについては農水省自ら隔離作業をしている。(井上恵一朗)

●自治体、板挟み 農家、早く移動を/住民、一時保管に反対

汚染稲わらが約4700トンと最も多かった宮城県。約4万3千個のロールが農家などの敷地に積み上げられている。多くが8千ベクレルを超えるセシウムに汚染されているという。

県は処分の助成費として、8月補正予算に約1億円を計上。今年産のわらを置く場所を確保するため、市町村とともに一時保管を決め、10月中に移動を始める予定だった。だが、周辺住民の反発などで保管場所探しは難航している。担当者は「一部で確保できる見通しがついているだけ。新しいわらと間違って牛に与えることを避けるため、早めに移動したいのだが……」と話す。

県内最大の畜産地帯で、2187トンの汚染わらがある登米市。市は市内9カ所での一時保管を計画し、9月下旬から住民説明会を始めたが、決まったのは2カ所にとどまっている。

「住民の放射能への不安に加え、汚染わらの最終処分の方法がはっきりしていないことも要因」と市の担当者は話す。住民には「一時保管は2年が限度」と説明しているが、「放置されかねない」とする不安は解消できていないという。

稲刈りは終盤を迎え、畜産農家らは今年産のわらを保存するため、汚染わらの早い搬出を求めている。板挟みに苦しむ市は9月、処分施設を国の責任で整備することを求める要請書を国に提出。村井嘉浩知事も今月、来県した細野豪志環境相に早く方針を示すことや保管場所の確保への協力を求めた。(荒海謙一)

【写真説明】

放射性セシウムによる汚染が確認され、倉庫に積み上げられたまま保管されていた稲わら=岩手県

《朝日新聞社asahi.com 2011年10月18日より引用》

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