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牛肉の放射能検査、山形・栃木など4県も独自に実施へ


2011年07月26日9時3分

放射性セシウムに汚染された牛肉が流通した問題で、山形、新潟、秋田、栃木各県は25日、各県産の牛肉の放射能の検査を独自に始める方針をそれぞれ明らかにした。県産牛への消費者の信頼を守ろうとする動きだが、課題も少なくない。

山形県はこの日からさっそく全頭検査を始めた。「出荷頭数を制限してでも、県産牛のブランドと、食の安全・安心を守りたい」。吉村美栄子知事は記者会見で、そう語った。

県によると、年間約1万8千頭が出荷される県産牛のうち9割弱にあたる約1万6千頭が県内3カ所のと畜場で処理されている。残りも県内で処理・検査するよう生産者や関係団体と調整を進めており、県の担当者は「検査の網の目を抜けて県外に出荷されることはない」と強調する。

ただ、放射能の検査ができる機関は県内に2カ所だけで1日32頭の検査が限界。同県からは1日平均約70頭が出荷されているが、当面は半分程度に落ち込む見通しだ。JA山形中央会の今田正夫会長は「国や県に検査態勢の整備を要請していく」と話す。

新潟県も県内からの出荷分全頭(年間7千頭余)を対象に検査すると表明。同県からは、汚染されたわらを与えた牛が計74頭出荷された。新潟県産の肉で基準値オーバーはまだない。しかし、県産牛の安全性をアピールしたい生産者の声は日増しに高まり、検査態勢を踏まえ「物理的に無理」と後ろ向きだった泉田裕彦知事が方針を転換した。

栃木県はこの日、県内のわらから基準値(1キロあたり300ベクレル)の80倍のセシウムが検出されたことから県内1890戸の全農家を対象に各戸1頭を検査することを決めた。

秋田県は8月1日から県内で処理される肉牛を対象に検査すると発表した。県の三浦庄助・農林水産部長は「4カ月かかっても被災地のがれき処理ができない政府には期待できない。国の方針が出るのを待っていては手遅れになる」と説明した。

しかし、県内から出荷される年間約7200頭のうち、県外で解体される牛約2700頭は対象外にせざるをえなかった。県には精密検査をする機器が1台しかないうえ、県外出荷用の牛は、農家が畜産業者やと畜場に生体のまま渡す契約をしていることも多い。県内で解体して検査することは難しいと判断した。

毎年3万3千頭の肉牛を出荷する宮城県もすでに全頭検査の方針を打ち出している。ただ、検査機器は女川町の県原子力センターに4台あったが、津波ですべて使用不能に。1台あたり2千万~3千万円で、新たに納入されるのは「早くても11月末になる」という。県外に協力を求めざるを得ない状況で、国が主導して全頭検査ができる態勢づくりを要望している。

だが、BSE(牛海綿状脳症)対策の全頭検査を続けている国も、今回の全頭検査には消極的だ。

BSEの場合、90体以上の検体を一度にプレートにのせて調べ、数時間で結果が出るのに対し、放射性物質の検査は30分から1時間に1頭を調べるのが精いっぱい。農林水産省の担当課は「全頭検査という言葉が独り歩きしている。多くの人が不安なのはわかるが……」と困惑気味だ。

《朝日新聞社asahi.com 2011年07月26日より引用》

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